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番 組
上島 浩(1978年)

「只今より、スペシャル番組をお送りします。『動物というものについて』の7回目です。ではどうぞ」
 テレビのナレーターは言った。若い男の声であった。
 注意深く、それに見入っていた子供が、母親に言った。
「今回も、きっと面白いよね?」
「さぁ、どうでしょうね」
 母は、微笑んで答えをはぐらかした。
 とは言ったものの、今まで6回とも面白かったので、母も少なからず期待はしていた。
 次の瞬間、そういう会話を中断させるようなことが起った。テレビの画面が、突然に乱れだしたのである。
 母と子は、不思議と心配さを持って、横縞になったブラウン管に目をやっていた。
 暫くすると、画面は直り、さきほどのナレーターの声が聞こえてきた。
「まことにすいません。現場に送り込んだ自動テレビカメラに、何かのトラブルが生じたようです。今しばらくお待ち下さい。すぐに修理を自動でしますから」
 ここでまた横縞になった。
「どうしたんだろう?」
 母と子は、その心には心配もあったが興味深さのほうが多かった。
「今回の動物は、前に僕が一度見たことがあるんだ」
 子供は得意になって言った。
「そうなの。母さんは初めてだわ」
「べつに期待するようなこともないよ。彼らの生態なんて、バカみたいなものさ」
 二人はその動物について、色々と言い合った。
 三たび、画面にアナウンサーがあらわれた。残念でたまらないような顔をして、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「皆様に本当に悲しいことを知らせなければなりません。まことに残念ではありますが、我々が最も深い興味を持っている動物が、只今、絶滅してしまいました。従って、今回予定していた番組はできそうにありません。
 彼らは、これから知能を発達させていったのなら、我々のよき友達となり、よきコンサルタントとなっていたでしょう。しかし、これらの願いは、すべて今では過去のものとなってしまったのです。
 水爆という、おそろしい武器で、彼らは、自らの命を断ったのです。これから我々は、第五間氷期における彼らの出現に期待しましょう。それが、我々の彼らに対する、してあげられることの唯一です」
 テレビが終わって母と子は溜息をつき、その八本もある手の一つで、そのスイッチを切った。銀河系のこの一角にある巨大な惑星にて。

【初出:天翔/大臨時号外(1978.4.26)】
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