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「やや!」
少年は指さしてさけんだ。近くにいた人々も、それを見てたまげた。満月がそこには二つあった。私もそれを見た。目をこすってこすって、それでも足らなく、またこすってみたとて、どうしてもそこにあるのは二つの月であった。
地球人はすべてが驚いた。ある学者は古い書物などむさぼり読んでみたが、こんな例は過去になかったと説き、また占師はとんでわいた異変により頭をショートさせ、政治家たちは何も関係ないけど目をぱちくりとさせた。
そのうち人々はいたるところで議論を重ねるようになった。即ち、どちらが本当の月かということである。
けれどどうしてもその答は出てこなかった。それもそのはず、それは双方ともうり二つで、はたと見分けがつかないのだ。しかし、事実必ずどちらかが本物で、またどちらかがニセモノであるということは明白なわけだ。さらにいくら議論しても同じであった。
そうしているうちに、どちらがどうであるかを言ってみたってしかたがないことに人々は気づくようになっていた。世の中すべてのものがそうであるともいえる。対応するものが必ず存在するということ。けれどそれは単に人間がきめることであって、本質的にはもっと大きな視野でみなくてはならないものではないだろうか。そんなことも気づくようになった。東がどうの西がどうの、右がどうの左がどうのといったってしかたがない。今や、巨大なロケットにのって脱出した、わずかな地球人たちにとって、核でなくした地球をおしむだけのことしか出来ないでいた。
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