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【いち】
むかしむかしのお話でございます。ある所に、とても上品なおじいさまとおばあさまが住んでおられたのでございます。
ある日のこと、おじいさまは山へ柴刈りに、おばあさまは川へ洗濯に出かけられたのでございます。
おじいさまが柴を担いで帰られる途中、横の竹やぶに何かあるのではないかと思われ、中へ入られたのでございます。さすがに聡明なるおじいさま、予感は見事に適中なされました。一本の竹の根元付近が、それはそれは美しく輝いていたのでございます。おじいさまは大層不思議がられました。
「げひひひひ。やったぜ! これは絶対、金や銀がつまっとるんや。わしゃ大金持ちじゃい。でへへへへ!」
おじいさまは思慮深くお考えになって、その竹をすっぱとお切りになられました。
と、なんと! その切り口には、小さな女の子がすうすうとねむっておったのでございます。
「けっ、なんじゃい。銭がないやんけ、くそったれ」
心やさしいおじいさまには残念なことにお子様がございませんでした。そこでこの女の子を育てようとお考えになったのでございます。
「まあこいつが大きなったら、どっかのガキひっかけさして銭もーけできるかもな」
【にい】
おじいさまが満面笑みをもらして大屋敷にお帰りになると、すでにお帰りになっておられたおばあさまがニコニコなさっておられました。
「よお、じじい。遅かったな。またソープランド行っとったんか。きんたま取れんように注意しとけ」
「だまればばあ! えーもん拾てきたったぞ。ほれ」
おじいさまが両の手をお広げになると、その手のひらに可愛らしい女の子がちょこんと座っています。
「な、なんやこれ。新種の大人のおもちゃかいな」
「あほばばあ! こいつを育てて金もうけするんじゃ」
「ほお、なるほど。そうじゃそうじゃ、さっき川で桃を拾てきたから、それ食わそ」
おばあさまは台所から俎(まないた)と包丁、それに大きな大きな桃を持ってこられました。おばあさまが包丁でもって桃を丁(ちょう)と切られますと、あな不思議! 真っ二つに割られた桃の中から玉のような男の子が現れたのでございます。
「あれ? またや。どうせ出てくんねやったら銭やったらええのに」
「あれ可愛い。このガキは大きなったらハンサムになるで」
「男なんか銭もーけになるかい」
「いえいえ、こいつは大きなってたぶん鬼ヶ島へ行って宝物をぶん取ってきそーじゃないか」
「ふん。まーとりあえず育ててみよか」
【さん】
歳月は流れ、竹から生まれた女の子は『かぐや女(おんな)』と呼ばれ、美しい娘に成長なさいました。
一方、桃から生まれた男の子の方はいっこうに大きくならず、みんなから『一寸桃太郎』と呼ばれておられました。
「おい桃! はよ鬼ヶ島行かんかい」
「ぼく知らないもーん」
「なにを! このクソガキ!」
そこへ、かぐや女とお召物を買いに行かれていたおばあさまがお戻りになられました。
「おいじじい、帰ったぞ。おいこらばばあ! 早よ持って来んかいあほんだら」
親切なかぐや女は一寸桃太郎へプレゼントを買ってこられたのでございました。
「ほれクソ桃、これやるから早よ行け」
「え、かぐや姉さま、どこへ行くの?」
「それ見たらわかるやろ、このぼんくら」
それは、最新式電磁サーベルと携帯用鎧の一式でございました。
「おいばばあ! 椀と箸持って来い。おいクソ桃、これを舟にしてな、鬼ヶ島行って宝取ってこい、ええな」
「ぼ、ぼく・・・」
「じゃかあしいクソ桃! 行けいうたら早よ行かんかい。またきんたま捩りあげられたいんか、ええっ」
勇気ある一寸桃太郎は、愛するおじいさまおばあさま、そしてかぐや女の幸せの為、お椀の舟で川を下って行かれたのでございます。ああ、おいたわしや。
【よん】
かぐや女の美しさは、日ごとに増し、その噂は都じゅうに広まっておりました。そして大屋敷には各地より集まってきた求婚者がひしめいておりました。
「げへへへへ。あっぱりわしの思た通り、アホ男がぎょーさん来よったわい」
「おいじじい、何をニタニタしとんねん。上品にしとらんかい。おいばばあ、一人ずつ中へ通せ」
最初に通されましたお方は、宮仕えの役人さまでございました。
「おおっ、なんと噂にたがわずお美しい!」
「え? ウソーォ。」
「ぜひ私と結婚して下され」
「いやですわ、エッチ。」
「これはつまらぬ物ですが、私の心づくしでございます。どうか良いご返事をお願いします」
という具合に次々と見合いをなされ、最後のお方が終わるとすでに日は落ちておりました。
「どや、銭持ってそうな男おったか」
「どれもこれも似たりよったりやな。ちょっとハンサムや思たら、どうもちんちんが小さいみたいやしな」
かぐや女とおじいさまが、こう話されていると、急におばあさまが走り込んでこられました。
「えらいこっちゃえらいこっちゃ。じじいも竹女(たけおんな)ものんびりしてる時ちゃうぞ」
「何や騒々しいなクソばばあ。ウチのダンナ決める時ぐらい静かにさらせ、どあほ」
「だあっとれ竹女! 空から軍隊が降りてきよったんじゃ」
そうです。空を見上げると、なんと! あの煌々と輝きわたる満月から、数百万の軍勢を従えて降りてこられるのは、月光仮面か七色仮面、ナショナル・キッドか少年ジェットか、いかなる強者(つわもの)かと思いきや、はたと大地に降りたつる、その姿をうかがい見れば、一羽の兎であったのでございます。
【ごお】
兎はこう申したのでございます。
「わあ、花ちゃん、大きなったなあ。さ、早よ帰ろ」
おじいさまとおばあさまはオロオロされました。
「なにぬかしとんねん! 花ちゃんなんかおらへんやないか」
「なんやて? そこにおるやんか。さ、おいでおいで」
兎はかぐや女の手を引っぱります。かぐや女はその美しい瞳からボロボロ涙をこぼされました。
「このあほんだらウサ公! こんなとこまで追っかけてきやがって」
「だって花ちゃんが好きやねんもん」
「ウチは嫌いじゃ。お前のちんちん、ウチの指より小さいやないか」
「お、男の価値はちんちんと関係ないわい!」
「ウチはイヤじゃ! ちんちんの大きいんやないとイヤやあ!」
兎はついに怒りを爆発させ、力づくでも連れ帰ろうとしました。
と、その時でございます。
数百万の軍勢をものともせず、はっしはっしと投げ飛ばし、天空を、翔るがごとく姿を現したのは、おおっ! 何と、因果は巡る糸車、隣は何をする人ぞ、隣の客が柿食えば、鐘が鳴るなり法隆寺、聖徳太子が屁をたれて、母屋の猫がニャンと鳴く、犬が歩けば糞をする、蛙ピョコピョコ三ピョコピョコ、さのよいよいよいのよいよいよい。
──すなわち、かの一寸桃太郎でございました。ただ彼は例の話のごとく、打出の小槌によって、たくましい若者になられていたのでございます。
兎の軍勢がああっと言う間に、一寸桃太郎はかぐや女をひっさらって行かれました。
【ろく】
「お前、いえあなた様があの一寸桃太郎だなんて、わたくし信じられませぬ」
「はっはっは。かぐや姉さま、私が来ればもう安心です」
そう言われている間に、かぐや女は一寸桃太郎のふんどしをひっぱがしておられました。
「あ!」
一寸桃太郎は顔を赤くなさいました。ふんどしの下は、何とマッチ棒の先ほどのちんちんだったのでございました。ここだけ打出の小槌のパワーが効いていなかったのです。
かくして、かぐや女は地上に絶望なされ、他の星目指して旅立って行かれたのでございましたとさ。
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